本稿は,大学図書館「公開」の役割について,大学図書館を実際に利用している一般利用者の分析を通じて実証的に明らかにすることを目的とするものである。左記目的のために1990年に,北海道における大学図書館の「公開」に関する調査を実施した。その中で,一般利用者に対して学内利用者と同様のサービスを提供している 2大学図書館(人文・社会科学系)の利用者84名全員についてアンケート調査を行った。更に大学図書館を特に必要とする利用者に対しては面接調査を実施し,一般利用者が大学図書館を必要とする背景を具体的に明らかにした。
その結果,大学図書館の一般利用者は学習・研究に対する関心が極めて高く,かつ大学図書館の専門的資料,サービスにむしろ必要性を有していることが明らかとなった。また,大学図書館を公共図書館の代替施設として利用しているケースは特別な条件がない限りは存在していないことが明らかとなった。時間的な便利さから大学図書館を利用する傾向も示されなかった。
大学図書館「公開」の役割として期待されているのはむしろその専門性の提供にあるといえる結果が示された。
抄録全体を表示