英国女王エリザベス二世は,70年という英国史上最長の君主在位期間を全うし,大きな時代の変化をくぐり抜けた。本稿ではその足跡を振り返りつつ,英国における君主制の仕組み,英国の王室財政,勲章をめぐる日本の皇室とのあまり知られていないやり取りなどについて取り上げる。その上で本題として,私の専門であるスコットランド経済史・思想史学の視点から,エリザベス二世とスコットランドの関わりについて論じる。スコットランド国民党が掲げる「欧州の中のスコットランドの独立」という党是は,英国の欧州連合(EU)離脱を経て,スコットランド独立はEU復帰のためという,以前よりはるかに大きな大義名分を得ることとなった。遅かれ早かれ,スコットランド独立が現実味を帯びてくるようになった現在に至るまでの経緯と,英国からの独立を模索するスコットランドを連合王国につなぎ止めるために苦心したエリザベス二世について論じる。
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