筆者が2014年に出版した『日本語教育のための文法コロケーションハンドブック』を作成した時の理念やもくろみ、周囲からの声を紹介する。まず、筆者は研究成果を論文ではなく紙媒体のハンドブックで発表するということにこだわった。論文を書くだけでは教育現場にその知見は伝わらない。現場に必要な情報を載せ、網羅性を完備し、さらに紙媒体ならではの手軽さを兼ね備えなければ、コーパス研究の知見を広く伝えることはできないと考えたからである。同時に、多量のデータを収集することで新しい研究につながるのではないかというもくろみもあった。ハンドブックの内容とは直接関係はしないが、言語学ならびに日本語教育に貢献できる様々な新しい研究につながった。一方で、作成中途の段階では、日本語教員から歓迎されたものの、日本語学の研究者からは否定的な反応も多かった。ここからは論文だけを業績とすることの問題点が見えてくる。
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