本稿は,「見る」という行為に着目し,西洋と日本の「見る」を比較しながら,日本の「見る」の特徴を明らかにするものである。始めに,ルネサンス期から抽象表現主義までの西洋画家たちの「見る」の変遷を追いながら西洋の「見る」を考察した。次に,仏教の「観る」をもとに日本画家たちの対象への迫り方を分析し,日本の「見る」を考察した。結果として,日本の「見る」は,内的真実を追求する点が強いことが明らかになった。そこで,日本の「観る」という概念を意識した美術教育を行えば,児童生徒は内的真実を追求することになり,より一層対象を鋭く観察する力や物事の本質を探ろうとする態度が身に付くのではないかと考え,「“観”を促す水墨表現」という方法の展開を提案する。
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