インド半乾燥地域における農村の土地利用が,政府の農村開発計画の適用を受けてどのような変化を生じたかについて,デカン高原南部の2つの村を事例として実証的な検討を行なった.その1つイエルドナ村は, 1957年に大規模水路灌漑の恩恵を受けて以来,それまでの自給的な乾燥地農業から稲,ラッカセイなどの商品作物生産を中心とする近代的な灌漑農業へと著しい変貌を遂げ,村の人口は急増した.一方,独立以来,井戸掘削事業や等高線土堤事業など政府の諸計画を積極的に受け入れてきたビダラケレ村は,天水耕地においても安定した農業生産を確保するようになるとともに,タマネギなどの商品作物を組み合わせて,顕著な農業発展をみた.その結果,近年,人口は大幅に増加しつつある.
しかしながら,それぞれの村では,灌漑用水管理や農地管理の不合理から,湿性地や塩性地の拡大,ガリー侵食の加速化,地下水の枯渇といった土地生態系の破壊を生じつつある.また,商品作経営への急激な転換のために農民の階層分化が激化しつつあること,さらには急速な人口増加に伴い,村落自治能力が低下しつつあることなど,今後の農村開発を阻害しかねない多くの深刻な問題を抱え込んでいる.
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