子どもの表現活動には,「音を聴いて絵を描く」等の特殊な活動場面が存在し,これは,「感覚間協応」と呼ばれる知覚現象に該当する。一方で,子どもに対する日本の保育では,表現活動は,1つの表現領域内で行われるのが通常である。ここに,子どもの表現特性を踏まえた教材研究が不活性である問題点を指摘できる。そこで,感覚間協応に基づく表現活動を,保育実践に導入する妥当性及び理論的根拠について,様々な作品や表現過程等の事例を取り上げながら考察した。その結果,感覚間協応が子どもの発達において広く当てはまる一般化の性質を持つと示唆されること,表現という芸術活動と感覚間協応の間に強い関連性が見られること,感覚間協応に基づく子どもの表現活動は,近年の『幼稚園教育要領』及び『保育所保育指針』の内容に適合することが明らかとなった。したがって,子どもの表現遊びの一手法として,感覚間協応を保育実践に取り入れる重要性を指摘できる。
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