日本では2025年に「認知症1300万人時代」が到来すると言われている.残念ながら,認知症の予防薬・根本治療薬は存在しない.認知症は,認知機能の障害により社会活動などが困難になる病気を総称したものであり,アルツハイマー病,レビー小体型認知症,前頭側頭型認知症など様々な症状がある.現在,脳老化メカニズムの探究を通して認知症発症メカニズムを明らかにしようとする試みが行われている.脳老化メカニズムのうち,神経系を構成するタンパク質の生理機能の喪失やタンパク質の毒性・病原性の獲得により,神経回路が破綻し認知症に至る脳タンパク質老化という概念が提唱された.我々はタウタンパク質に焦点を当てて,脳老化現象の追跡ならびに老化を誘導する毒性メカニズムの探索を行なってきた.タウタンパク質は加齢とともに機能的変化を起こし,最終的には細胞内タンパク質凝集体を形成し,神経細胞死を誘導することが知られており,ヒト病態を反映するモデルマウスの開発も進められてきた.我々は,タウオパチーマスモデルを用いて陽電子放出断層撮像(positron emission tomography:PET)イメージング,核磁気共鳴診断法(magnetic resonance imaging:MRI),二光子顕微鏡による蛍光イメージングを通して,生体でのタウタンパク質老化を追跡し,同一個体での病態進行度を評価しうる実験系を確立した.
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