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クエリ検索: "シェパード諸島"
1件中 1-1の結果を表示しています
  • 白川 千尋
    民族學研究
    2001年 66 巻 2 号 203-221
    発行日: 2001/09/30
    公開日: 2018/03/27
    ジャーナル フリー
    カストムに関する議論において言及される頻度の高いものに、「伝統の創造」論の枠組みによってカストムを分析したキージングの研究と、それに対するハワイ先住民の活動家で研究者でもあるトラスクの批判を挙げることができる。これらの議論は人類学者と現地社会の関係性を考える際の参照点の一つとなってきたが、そのなかでトラスクの主張は文化を語る権利をめぐって提起されたものとして位置づけられてきた。しかし、トラスクの例とは異なるカストムにまつわる問題を現地社会の人々の視点から理解しようとする場合、それを早急に文化を語る権利をめぐる問題として位置づけることには十分慎重であるべきだろう。本稿はこの点について、ヴァヌアツ・トンゴア島民の間におけるカストムの様相を明らかにすることを通して考察を行ったものである。本稿の前半部では、従来のオセアニアの伝統概念に関する研究においてビスラマ語のカストムと一括して扱われることのあったフィジー語のヴァカヴァヌアやサモア語のファアサモアとの比較を導入とし、それらと語義的に共通の構造をもち、指示対象においてカストムと重なる部分をもつアエラン・スタエルというビスラマ語概念と関連させながら、トンゴア島民の間におけるカストムの輪郭を浮き彫りにしようとした。また、それを踏まえて後半部では、トンゴア島民が日常的に使うナマクラ語においてカストムに対応するものと位置づけられているナヴァカマティという概念に焦点を当て、検討を行った。そして、伝統的な事象に関する知識としてのナヴァカマティにおける保有物の如き側面を念頭に置くならば、人類学者とトンゴア島民の間に生じ得るカストムにまつわる葛藤は、文化を語る権利をめぐるものとして捉えるだけでは不十分であり、むしろまずカストムという語で指示される対象の保有にまつわる問題として理解する必要があることを指摘した。
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