Theodore Dreiser の
The “Genius” (1915)は8つの長編小説の中で最も評価が低い作品と言われている。この小説の主人公Eugene Witla はドライサー自身がモデルである。ドライサーが極めて個人的な問題を扱ったことで,客観的処理ができなかったことが低評価の大きな原因と考えられている。『天才』の1910年版では,ユージンと彼の理想とする女性Suzanne の恋が成就するハッピーエンディングであったが,書き直しがなされ,1915年に出版された版では二人は結ばれていない。ユージンはスザンヌとの情事で失脚し,妻Angela が帝王切開の手術を受けて娘を出産したのち命を落としたことで自分を責める。ユージンはスザンヌとニューヨークで再会するが,互いに声をかけず,心も通うことはない。アンジェラの悲劇的人生とは対照的に,結末ではユージンは画家として再起し,娘との生活に慰みを見出している。この論文では,第3部“Revolt” を中心にして,ユージンとスザンヌの愛をめぐるストーリー展開と作品の結末を考察するとともに,『天才』の作品評価を試みている。
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