本研究は、IFRS適用日本企業を対象としてIFRSのIAS 38(国際会計基準第38号)により資産計上された開発費の資産性を実証的に調査した。具体的には、連結貸借対照表に無形資産の一部として資産計上されている開発費すなわち開発資産と、将来利益率の水準・将来利益率の不確実性との関係を検証するために実証分析を行った。さらに、開発資産の価値関連性に関する分析を行った。その結果では、開発資産と将来利益率の水準との間に有意な結果は示されなかった。しかしその一方で、開発資産が将来利益率の不確実性を高めていないことが明らかになった。また、開発資産が価値関連性を有していることを発見した。加えて、開発資産の計上状況に関する調査も行っている。そして、開発資産の計上状況は業種により異なっており、同じ業種であっても企業ごとに開発資産の計上状況が異なること明らかになった。これらは、業種や企業により開発に伴う不確実性が相違するためだと考えられる。
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