本研究の目的は, 組織における事故発生の構造をシステム論的に解析し, 今後のプロジェクトマネジメント段階での予防アプローチへ貢献することである.まず安全問題には多領域にわたる学際的なリスクマネジメント研究の必要性があることを指摘する.それをふまえて本研究では安全問題の中から特に「組織事故」に焦点を当てる.組織事故を予防するためには, プロジェクトのライフサイクルにおける「概念作成」, 「定義規定」の段階で, 「局所的に存在する潜在的な危険を認識させ, 理解すること」が不可欠であり, システム設計段階で事故予防のための診断が必要であることを示す.その際, 組織事故を従来の人間信頼性モデルに加え, ポリエージェントシステム(多主体複雑系)の考え方に基づくモデル化が有効であることを主張する.最後にケーススタディを用いて検証, 考察を行う.
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