ロボトミーはモニスのノーベル賞受賞で奇跡の治療として市民権を得る。しかし受賞からわずか3年後に,クロルプロマジンというロボトミーに対する最も強力なライバルが現れる。ロボトミーの負の側面,すなわち手術死亡率の高さや人格の変化などが問題点として顕在化しロボトミーに対する世間の風向きが変わる。ロボトミーに批判的な映画や様々な社会スキャンダルが登場し奇跡の治療が悪魔の手術に転落する。ロボトミーに対する社会の評価の変貌を読み解く。
本稿では1975年の日本精神神経学会による精神外科否定決議以降に発生したロボトミーに纏わる社会事象に触れる。マンガの神様と言われた手塚治虫がなぜ全国主要5紙に謝罪文を掲載することになったのか,その背景を探る。衝動的暴力抑制の目的で行われたチングレクトミーの15年後に元患者が起こした,いわゆるロボトミー殺人事件の経緯を解説する。最後に精医連の活動が真相解明に大きく寄与した宇都宮病院事件に触れる。
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