過敏性腸症候群は,腹痛が便通異常に関連して続く病的状態である.過敏性腸症候群は現在の国際的診断基準のRome IVでは4(便秘,下痢,混合,分類不能)型に分類される.その病態は,脳腸相関を軸に解明が進んでおり,下部消化管運動亢進,内臓知覚過敏,不安・うつ・身体化の心理的異常がしばしば生じる.これらの更なる源流として,ストレス,ゲノム,腸内細菌,粘膜微小炎症,粘膜透過性亢進,脳の局所の形態変化をともなう機能的変容が追求されている.過敏性腸症候群の治療は,病態の理解と食生活・運動を中心とした生活習慣の改善の上に,消化管を標的臓器とする薬物療法,中枢薬理,心理療法という順番で実施することが推奨される.
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