東南アジアにおける立憲君主制国家のカンボジア王国(Kingdom of Cambodia:以下,カンボジア)は,インドシナ半島の中央に位置し,西部にタイ,東部にベトナム,北部にラオスと国境を接し,南部は南シナ海に接している。
現在,カンボジアにおける主要産業は農業や漁業,林業の第一次産業が中心であるが,近年の観光業や縫製業等による発展で,過去10 年間の実質国内総生産(GDP:Gross Domestic Product)(注1) 成長率が平均 7.9%の高い経済成長を続けている。近年では,チャイナ・プラスワン(注2 )のリスク分散国の 1 つの国として注目を浴びており,外国からの直接投資も大きな伸びを示している。
特に,中国・韓国系企業が社会インフラ・不動産関連を中心に積極的な投資を行っている。例えば,首都プノンペン市内でのカンボジア首相府のビル(中国)や42 階建ての高層ビル(韓国),プノンペン郊外での20 億米ドル規模の新興都市(韓国)の建設,カンボジア南部のタイランド湾に面した港湾都市シハヌークビルのインフラ整備(中国)等に多額の投資を行っている。
一方,カンボジア国内の産業政策においては,経済特別区(SEZ:Special Economic Zone)や工業団地(IZ:Industrial Zone)等の産業集積地を中心とした地域産業を開発することで,積極的な外資誘致政策を展開している。
本稿では,筆者の現地調査( 注3 )に基づき,産業集積地の開発,および同地への日系企業の進出が数多くみられるプノンペン経済特区(PPSEZ:Phnom Penh Special Economic Zone)の事例を中心に,カンボジアにおける産業クラスター( 注4 ) の可能性についての考察を行うこととする。
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