本研究は,湖沼において重金属 Cu
2+ 汚染によるセキショウモ (
Vallisneria asiatica) の抗酸化的生理情報を得るため,Cu
2+ 濃度 0, 5, 10, 20, 40, 80 mg・L
-1 の 6 処理区を設け,処理 12 日目に根と葉のクロロフィル,タンパク質とマロンジアルデヒド (MDA) の含量及びスーパーオキシドジスムターゼ (SOD),カタラーゼ (CAT) とペルオキシダーゼ (POD) 活性を測定した.実験処理前に比べ,0 mg・L
-1 区では,根と葉ともにクロロフィルとタンパク質含量の減少,MDA 含量の増加,SOD と POD 活性の上昇が大きかった.5 mg・L
-1 区では,0 mg・L
-1 区より根と葉ともクロロフィルとタンパク質含量の増加,MDA 含量の減少,SOD と POD 活性の上昇も少なかった.しかし,10 mg・L
-1 区では,根と葉のクロロフィルとタンパク質含量の減少,MDA 含量の増加,根の SOD と POD 及び葉の SOD と CAT 活性の上昇が 5mg・L
-1 区よりも大きかった.さらに 20, 40, 80 mg・L
-1 区では,10 mg・L
-1 区以上に根と葉とも Cu
2+濃度の高くなる区ほど,クロロフィルとタンパク質の減少,MDA の増加が大きくなり,CAT が上昇し続け,POD が低下に転じた.これらの結果により,セキショウモにおいては,水環境の Cu
2+ 欠乏及び Cu
2+汚染とも SOD,CAT と POD 活性からみた抗酸化機能に影響することが示され,これらの抗酸化酵素活性がクロロフィル,タンパク質と MDA と共に水環境の Cu
2+ 汚染の予測と評価の指標になると考えられる.
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