文学はその誕生以来、語り直しを通じて時代と国境を越え受容されてきたが、現在までに多くのアダプテーション作品を生んだ『白雪姫』もその一例である。リンダ・ハッチオンはアダプテーションをストーリーが特定の文化環境に適合するための変異と順応のプロセスととらえ、ストーリーはアダプテーションを通じて進化するとする(ハッチオン2012: 219)。筆者はこの進化とはアダプテーション制作者が原典に施した新たな解釈であるととらえ、これこそが作品が受容過程で獲得する新たな価値であると考える。本論ではこれを踏まえてパブロ・ベルヘル監督『ブランカニエベス』(2012年)を原典と比較・分析し、アダプテーションの過程で『白雪姫』が得た新しい解釈を明らかにする。なお、分析に際してはグリム版『白雪姫』を原典と位置付ける。加えて、最も影響力を持つアダプテーションであるディズニー版『白雪姫』そして『ブランカニエベス』と同年に公開された『白雪姫と鏡の女王』『スノーホワイト』との比較も適宜行う。
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