大正8年、旧都市計画法は公布された。渡辺俊一、大方潤一郎は、ドイツ、イギリス、アメリカの近代都市計画法制を参照した法案起草者の池田宏は土地利用計画の確立をめざしたが、土地利用計画と地域制の概念上の区別が不明確であったため、土地利用計画は制度化されなかった、と述べている。本論文はこの仮説を検証し、(1)土地利用計画は、民間の土地の利用に関する長期的、概括的(従って法的に非拘束)な計画と定義されること。(2) 1910年代のドイツ、イギリス、アメリカの都市計画法制には土地利用計画はなかったこと。(3)池田宏には土地利用計画の観念はなかったこと。(4)池田宏は、アメリカの都市計画家の考えを採用し、土地利用計画ではなく、地域制を導入することを提案し、旧法で実現したこと。(5)彼は、外国の総合的都市計画の理念と、東京市区改正条例の精神を結合することにより、旧都市計画法を世界に類例のない計画法としたことを明らかにしている。
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