末梢性顔面神経麻痺は一般的に予後良好な疾患であるが, 全体の2割程度に Bell 麻痺の重症例や Hunt 症候群などの予後不良例が存在する. これらの予後不良例にはリハビリテーション治療が行われるが, 2011年の顔面神経麻痺診療の手引きでは, 行うよう考慮しても良いが十分な科学的根拠はないとされていた. 一方, 2023年に改訂された顔面神経麻痺診療ガイドライン2023年度版では, ガイドライン作成の際に行われたメタアナリシスで, リハビリテーションの介入が非治癒を減らすこと, Sunnybrook 法の複合点を増加させることがエビデンスとして取り入れられた. これを受けてガイドラインでは「末梢性顔面神経麻痺 (Bell 麻痺, Hunt 症候群, 外傷性麻痺) 患者に対し, リハビリテーション治療を行うことを弱く推奨する」ことが新たに提言された. 本稿ではガイドラインに基づき, 末梢性顔面神経麻痺のリハビリテーション治療の実施方法を急性期, 回復期・生活期に分けて手技別に述べるとともに, 実施を担う人材の育成状況についても触れることとする.
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