種々の化学物質が, 快適性とファッション性を付与するために衣料処理剤として使われる.しかしこれらの化学物質は, 皮膚障害を引き起こすことがある.アトピー性皮膚炎の患者は, 衣服に用いられている化学物質に対して敏感である.近年, 皮膚障害を予防する処理を施した衣服が市場にみられる.本研究の目的は, 市場に出ているこれらの衣服が, 皮膚障害の症状の改善に役だっているか否かを調査することである.
調査は, 質問紙法により行った.調査対象は, 年齢18~22歳の東海地方に在住する女子大生858人である.調査では, 衣服による皮膚障害の経験の有無を尋ねた.さらに, 調査対象者には, 「肌にやさしい衣服」の認知度, 着用経験, および「肌にやさしい衣服」の着用によって皮膚障害が改善されたか否かを尋ねた.
最も多い皮膚障害の原因は衣服であり, 調査対象者の37.7%を占めた.衣服による皮膚障害経験者群の「肌にやさしい衣服」の認知度は45.9%であり, 非経験者群は40.6%であった.衣服による皮膚障害経験者296人中22人である7.4%が, 「肌にやさしい衣服」を着用したことがあった.非経験者群は490人中15人の3.2%が「肌にやさしい衣服」を着用したことがあった.このように, 「肌にやさしい衣服」の着用者数は, 経験者群は非経験者群より有意 (p<0.01) に高値であった.「肌にやさしい衣服」の着用によって皮膚障害の症状が改善された者の数は, 22人中11人であった.「肌にやさしい衣服」の着用を推進する活動の必要性を認めた.
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