譲渡性開発権(TDR)制度とは,不動産に対する権利は単一の権利ではなく,さまざまな権利の束から成るものであり,その権利の一部を他の権利から切り離して他の経済主体に譲渡できるという考えに基づいて考案された制度である。 TDR制度は,自然や歴史的環境の保全,オープンスペースの確保などのための土地利用規制に伴う,開発区域と環境保全区域との間の分配の平等を達成するための手段,および開発に伴う環境汚染に代表される混雑現象を抑制するための手段として機能する。 本論文はこのTDR制度の機能のメカニズムを明らかにし,TDR制度とそれと同じ機能を持っている土地税制・補償制度と開発負担金制度とを比較検討している。本稿が環境保全の手段としてTDR制度を日本へ導入することを考慮するきっかけとなれば幸いである。
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