日本生態学会は、 2011年に石狩浜銭函地区に風発建設計画が提案されたことを受け、海岸植生の帯状構造が明瞭かつ希少であるという学術的な価値から「銭函海岸における風車建設の中止を求める意見書」を北海道および事業者に提出した。これを受け、自然保護専門委員会内に石狩海岸風車建設事業計画の中止を求める要望書アフターケア委員会( ACC)を発足させた。しかし、風発は建設され、 2020年 2月に稼働を始めた。そこで、 ACC委員は 2020年夏期に、銭函海岸風発建設地および周辺において、植生改変状況・鳥類相に関する事後調査を実施したので、その結果をここに報告する。建設前の地上での生物調査を行わなかったため、建設後に風発周辺の地域と風発から離れた地域を比較した。概況は以下の通り。(1)改変面積 5.5 haのうちヤードが 61%を占め、作業道路法面には侵食が認められ、(2)風発は海岸線にほぼ並行して建設されたため、内陸側の低木を交えた草原帯の範囲のみが著しい影響を受け、(3)風発建設時に作られた作業道路・ヤード上には外来植物種、特にオニハマダイコンの定着が著しく、(4)鳥類は、種数・個体数が低下し群集組成が単純化していた。
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