本論文は,カリフォルニア州サンノゼ市における日本人街(サンノゼ日本町)の生成と歴史的展開を,特にその空間構成,すなわち商店を中心とする各種施設の構成とその空間的配置の変容に着目して分析・検討し,この日本人街の地理的・歴史的性格及び日本人街としての存続理由を考察したものである。同日本町は,19世紀末から20世紀初頭にかけてサンタクララ平原の日系人農業労働者コミュニティの中心として生成し,1910年代までには小売り業,サービス業,コミュニティ施設などのバランスのとれた日本人街として成長した。その後,戦中の中断期を経て戦後の日系人再定住期に再建され,現在は再活性化策などの影響もあって施設数が増加し,中心部に小売り店舗,特に日本食レストランが集中する盛り場として存続している。総じて,空間的構造の大きな変化は見られず,小規模な日系エスニック・タウンとして今日まで存続してきたと言える。大規模な再開発を経ずに存続できた理由としては,ホスト社会との良好な関係,都市計画のダイナミズムの弱さ,コミュニティ組織との協同を重視する再開発公社の方針など外的要因,諸組織の協力体制の構築など内的要因が複合的に働いたことが考えられる。
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