ルビーとレッドスピネルを現在の一般的評価で比較すると,ルビーはいわゆる貴石に含まれ,スピネルは半貴石に含まれるなど,評価はルビーの方が高いと言えよう.
しかし,歴史を振り返ると多くの人々を魅了してきたロイヤルジュエリーに使用されてきた宝石が,実はルビーではなくレッドスピネルであったことが,後に判明したことが何度もあった.
後にスピネルと判明したロイヤルジュエリーとしては,Imperial State Crownの黒太子のルビー,エカチェリーナ2世の王冠のレッドスピネル,チムールルビーなどが挙げられる.これらはスピネルと分かるまでルビーとして人々のあこがれを集めてきた.
一方,ルビーでは,196.10ctsのHixon Rubyや,The Rosser Reeves Star Ruby 138.7cts など100ctを超えるような原石やスタールビーも知られているが,これらはルースや原石自体として博物館に所蔵・展示されているものであり,王室など著名人のジュエリーとしては使われてはいない.
ロイヤルジュエリーとして人々の目に触れてきたものとはしては,10~15ctsと推測されるStuart Coronation ringのルビーや,ナポレオンの妹ポリーヌ・ボナパルトのためにつくられた
パリュール
に使われた数ctsの複数のルビーからなるBorghese Ruby等があり,どれも素晴らしいものであるが,ルビーの大きさも限られており,レッドスピネルのように一つの石が大きく,一石がジュエリーに強いインパクトを与えられるものではなかった.
このようなことから,ロイヤルジュエリーに用いられてきた有名なルビーと言われてきたものの中には,レッドスピネルだったものがあり,それらがルビーとして人々の羨望を受け,人々のあこがれを喚起されてきた.ロイヤルジュエリーにおいて,ルビーとして活躍したスピネルの役割は大きいと言えるだろう.
謝辞)
アルビオンアート株式会社
Dr. Jack Ogden
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