インターネットの発展によりオンラインでの放送によるスポーツ観戦が増え, これに対するアノテーション表示も,観戦支援に重要な要素となっている. アノテーションでは試合に関する様々な情報の表示とその解説や応援などがなされ, E-sportsやスポーツ動画の配信において,アノテーションは試合本体と同程度の重要性を持つことが多い. 本論文は,野球観戦において,プレイヤの心理戦を観戦支援情報として利用することを提案する. 従来のアノテーションは,点数や試合進行状況,経過時間,戦術統計, 過去の対戦履歴など客観的な情報と,解説者の解説情報から成り立っていた. 対して本論文は,新たにプレイヤ同士の心理戦を,視聴者の主観的な期待にもとづいて推論し,アノテーションとして付与する点に特徴がある. 視聴者はプレイヤ同士の戦略の応酬を見ることで試合を楽しむが, このとき「頑張った」「弱気になっている」などプレイヤの心理を予想をしており, 実際のプレイヤ心理に対してこの予想の正否にかかわらず,視聴者は勝手な予想で主観的に面白さを感じている. そこで,視聴者の主観的な試合状況把握の情報と試合の客観情報から, 提示するべきプレイヤの心理状態を観戦者知識にもとづくファジィ推論で算出し, ラッセル空間を経由してイラストアイコンにより視聴者にアノテーションを提示するシステムを構築した. 野球観戦について3種の被験者実験をそれぞれ10名程度を対象に行なった. その結果,システム出力の共感度,一致度, 面白さの向上についてそれぞれ高い平均値が得られ,提案システムの有効性を示すことができた.
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