一般には起こりにくいとされる睡眠中にも擬似発作を認めた
ヒステリー
の1例を,脳波学的および心理学的考察を加えて報告した.
症例は,32歳の男性.26歳時,作業中に鉄のバールで右側頭部を強打した.頭部CT検査などに異常を認めなかったが,3カ月後より右手指がつるようになり,次第に四肢および全身が強直するような発作が頻発するようになった.てんかんの疑いにて投薬を受けるも効なく,平成2年7月18日,関西医科大学病院精神神経科に入院した.
入院時より擬似発作を疑い,抗てんかん薬を漸減,中止するも症状は悪化しなかった.脳波検査施行中,発作を認めるも突発性異常波の出現はなかった.また,睡眠脳波記録中,stageIIにおいて発作が出現したが,この時も突発性異常波を認めなかった.
本症例は,頭部外傷を契機として何らかの心的機制により,身体症状としての全身の強直様発作が表出したと思われた.脳波上,てんかんを示唆する異常波の出現はなく,発作中意識清明で発作後もうろう状態も見られなかった.また,自分の欲求が通らない状況下で発作回数が増すなど,発作が出現し易い時と場所が存在した.性格傾向は,演戯性,自己中心性,依存性が目立ち,いわゆる
ヒステリー
性格に一致した.以上より,本症例の強直様発作は,
ヒステリー
における擬似発作であると考えた.
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