本論は、オウム真理教元幹部Aの入信と脱会の事例を扱う。Aは、精神的な探求者としてさまざまな宗教団体や霊能者などを遍歴した後、教祖と出会い同教団の最初の出家者となった。強い信仰と神秘体験によってAは人類の救済を目指すとされた教団の活動に積極的に関わったが、同時に同教団の犯罪行為へと深く関与することとなった。強い信仰を持っていたときには、教団による殺人行為も救済としてのポアとして宗教的に正当化したり合理化したりすることができたが、棄教に至ったとき、それは単なる殺人としてAの心に重くのしかかることになった。
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