本研究では、商業施設が路線バスに協力する形態について、送迎バスの機能を路線バスが代替している点に着目して、協力する商業施設の損益と、協力に伴うバスの採算性と需要変動について分析を行なった。まず商業施設側の損益に関わる項目を整理し、実際に三郷市の事例に適用した。その結果、商業施設側にとっても送迎バスを独自に運行するよりも路線バスに協力する方が得になる可能性が高いことが示唆された。続いて、協力により成立するサービスと需要の関係について、独自の調査結果を用いて三郷市の事例で分析を行なった。その結果、現在のサービスは協力関係があってこそ成り立つものであり、協力なしでは実現できない高いサービスが提供できるため買物客以外の利用も大きく増えることが分かった。最後に、ゲーム理論の枠組みで、商業施設が従業員送迎を出すか否かと、バス事業者が低頻度で運行するか高頻度で運行するかの選択を分析した。その結果、協力関係が双方にとって望ましいにも関わらず協力が難しい囚人のジレンマ構造かそれに近い構造になるとみられ、三郷市で協力が可能になった要因として市のコーディネートなどを考察した。
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