アイスランドは、世界でも数少ないホエール・ウォッチングと捕鯨が並存する国の一つである。2015年、外国人観光客128万9100人がアイスランドを訪れており、そのうち27万1800人が同国周辺海域でのホエール・ウォッチングに参加している。その一方、同年、アイスランドにおいては、商業捕鯨としてナガスクジラ155頭とミンククジラ29頭が捕殺されている。現在、首都レイキャヴィクを取り囲む
ファクサ湾
の内側では、ミンククジラほかを対象とするホエール・ウォッチングが実施され、その外側ではミンククジラ捕鯨が実施されている。海図上に引かれた一本線がホエール・ウォッチング専用海域と捕鯨海域を隔てる境界となっているだけであり、時にその隣接性が両事業者間に軋轢を引き起こしている。現地調査を実施した筆者は、ホエール・ウォッチングと捕鯨が共存するためには、ホエール・ウォッチング専用海域と捕鯨海域の間にある程度の幅をもつ緩衝帯が設定されることが望ましいと考えている。
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