日本は内向きである,と最近しばしば耳にする。それは学術研究分野においても指摘されている。我々が関与する情報システム研究分野も例外ではない。AIS関連の国際会議で日本人研究者による研究発表は極めて少数となっている。筆者は自身の経験と関連情報をまじえ,一般にいわれる状況が情報システム研究分野でも発生していることを報告する。そして,筆者らが最近行った実証研究に基づいて,研究関心が国内と海外では異なること,国内で研究実績を作れる実質的な制度があることなどに言及し,海外発表への動機付けが低くなっていると指摘する。このような現状に符合して,海外での発表にはその努力や労力を上回る効用があることが充分理解されていない可能性があるとする。海外での発表が有する効用について,多様な研究者ネットワークを構築できるだけではなく,主流や時流でない研究でも充分議論がされ,関連する深い知見が得られることなどを自身の経験を踏まえ筆者は紹介し,そして最後に海外での発表を推奨している。
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