喫煙は日本人の4大死因のがん, 心臓病, 脳卒中, 肺炎の主要な危険因子であり, 男性の全死亡の34%とがん死亡の35%はタバコ (能動喫煙と受動喫煙) によってもたらされており, 高血圧や糖尿病, メタボリックシンドロームをはるかに上回る最大の余命短縮因子となっている.
紙巻きタバコ煙に含まれるニコチン, ニトロソアミン, 多環芳香族炭化水素, ポロニウム210が, がんのイニシエーションとプロモーションに関与する. わが国では男性のがんの35%, 女性のがんの8%が喫煙によって引き起こされている. 能動喫煙は, 上気道消化管がんの主要な危険因子でもある. 受動喫煙もまた上気道消化管がんリスクを有意に増加させる. 日本人女性では閉経前乳がんの半数が能動喫煙と受動喫煙で引き起こされている.
喫煙を減らすためには, 健診・人間ドックにおける 「喫煙=要治療」 項目化, 禁煙外来における禁煙治療の推進, タバコ税の大幅引き上げ, 受動喫煙防止法の制定などの対策を総合的に進める必要がある. 職場だけでなく飲食施設まで法律で完全禁煙とした国や地域では, 心臓病・脳卒中・呼吸器疾患の入院率が速やかに2~3割低下している. がんの予防可能な最大原因である喫煙を減らすために, これらの対策を速やかに講ずることが望まれる.
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