補完通貨(もしくは地域通貨)の取り組みは、1990年代頃から日本全国で広まったが、現在は活動休止しているものや、運用中でもごく小規模・限定的な利用にとどまっているものが多い。本稿では、まず地域資源を循環させていく上で補完通貨が果たしうる役割を確認した上で、県内におけるこれまでの補完通貨の取り組みについて概観した。その上で、滋賀県が主導して、琵琶湖およびその周辺の環境を改善していくために、新たに環境通貨「びわ切符」を導入する可能性を提示した。2010年に補完通貨の権威である
ベルナルド
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リエター
氏を招聘して受けたアドバイスも取り入れつつ、導入するための具体的なプロセスや各ステークホルダーにとっての利点などを詳細に説明した。提案後しばらく具体化に向けた動きは止まっていたが、リエター氏の新著における言及、東近江市での新たな補完通貨の動き、また震災後の地方における柔軟な体制づくりの必要性など、今改めて、動き出すべき機運の高まりを感じている。本稿を契機として、実現に向けた継続的な動きを再スタートさせたい。
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