貧血を伴ったオーバートレーニング症候群の長距離走選手に苓桂朮甘湯を投与し症状及び貧血の改善を認めた2症例を経験したので報告する。症例1は18歳の女学生。以前より鉄欠乏性貧血を指摘され, 鉄剤の内服でHb11g/dl前後で経過していた。1996年に大学入学後, 長距離走の練習量の増加に伴い立ちくらみや倦怠感が出現した。同年9月には貧血も悪化し, 当科を初診。苓桂朮甘湯を投与後, 症状は改善。11月にはHb11.9g/dlとなり, 最大酸素摂取量も上昇した。症例2は19歳の女子事務員。以前から, 鉄欠乏性貧血のため, 鉄剤を内服し, Hb11g/dl前後で経過していた。実業団の陸上部に所属していたが, 易疲労感が続くため, 1996年12月当科を初診。補中益気湯を投与し, 倦怠感は軽減した。しかし, 翌年, 練習量の増加に伴い, 体が重い, 立ちくらみ等の症状が出現。貧血の増悪も認め, 苓桂朮甘湯を投与したところ, 諸症状と貧血の改善を認めた。
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