近代日本における色彩論については,これまで先行研究はありつつも不明な点が残る.特に,西欧や米国で発展した色彩論が,どのような社会的背景のもとで受容され,展開したのか,という点が明らかではない.本論文はまず,主に日本に流入して受容された,近代欧米の色彩論を概観する.次に,欧米の色彩論が近代日本で受容される以前,日本において色彩はどのように考えられたのかについて整理する.さらに,近代以降にもたらされた色彩論がどのように展開したのかについて,色図等の資料をもとに検討する.そして,日本の色彩論発展において大きな役割を果たした,美術教育とその担い手等の活躍について文献を中心に検討する.これらの検討を通じ,近代日本の色彩論の発展を歴史的に検証する.
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