本研究では,海外諸国における火災時の自力避難困難者の避難安全規制等の現状を比較して整理することを通じて,国際的な水準に比べての我が国の取り組みの現状を把握するとともに今後の課題を示唆することを目的とした。筆者らは,火災時の避難の規定等の調査をするために防火安全避難に関する国内外の実務者や研究者等を対象に16か国へのアンケート調査を実施した。自力避難困難者の避難安全の規定等に関して,諸外国と比較すると,我が国が際立って遅れをとっていることがわかる。この現状を踏まえると,東京オリンピック,パラリンピック開催を2020年に迎える我が国としては,オリンピック・パラリンピックアクセシビリティガイドにも要求され,かつ海外諸国では,既に普及が進んでいる視覚火災警報設備および一時待機場所の全国的な設置は,早急に推進を図るべき喫緊の課題であるといえる。
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