マレー半島中部のパタニとクダーは一三~一五世紀頃にマレー半島でもっとも早くイスラーム王権が誕生したと言われる。交易都市としての繁栄は一七世紀を頂点とし、以後は辺境地に凋落する。その代わりパタニは一九世紀の末から東南アジアのイスラーム学習の拠点となった。パタニ出身のイスラーム学者シェイク・ダウドがメッカに留学して、パタニ・マレー語によるイスラームの翻訳書を多数著し、それが弟子によって持ち帰られ伝統的学習塾であるポンドックで教科書となっている。
ポンドックは現在のタイ=マレーシア国境地域にあたるパタニ、クランタン、クダーに広がっており、その影響は現在の国境の枠で考えるべきではない。ポンドックはメッカ留学のための予備教育の場として機能し「メッカのベランダ」と呼ばれる。ポンドックとメッカ間の知的ネットワークは一九世紀後半から二〇世紀前半にかけて活発になり、一般ムスリムのイスラーム実践をもより深化させた。
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