高度成長期以後の日本における観光地理学は,地場産業論的研究が中心となっていた.しかし,現代的行動様式を有する企業が主導的役割を演ずる観光の今日的現象に対応するために,経済学的基盤を有する研究の必要性が増大している.そこで,本稿は資本の運動と施設の立地展開の相互規定的関係を,資本の回転を中心にマクロな次元で分析した.研究対象としては,現代日本の観光産業の中心的特徴を有する会員制リゾートクラブを選んだ.資本の運動の一局面として施設の立地展開を捉えると,大都市周辺の有名温泉型観光地を中心に,外延的に展開していく会員制リゾートクラブのそれは,資本の運動に内在する矛盾を拡大する1つの重要な契機となっている.また既存の施設の立地を前提として,その潜在的矛盾に基づいて施設がさらに加速度的に展開していく傾向をもつといえる.
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