2017年以降も、世界各国では反既成政治の潮流がますます勢いを増している。そこには各国独自の要素と並んで、共通項としての「政治的疎外」が存在する。グローバル化や技術革新は、生活を便利にする一方で、中間層の在り方にも大きなインパクトをもたらし、かつては豊かさを享受してきたはずの人々の不安や不満、そして有効策を講じえない既存政治への不信を生む。こうした疎外感を合理的に解決できないと、政治に背を向けてしまったり、自らの不満を
他者や集団(例えば、既得権益層や移民)のせいにしたり、政治局面を一変させてくれそうな新しい指導者の登場を待望したりと、ポピュリズムの芽が出てくることになる。日本では、政治的疎外を既存の政党システム内で処理できる──疎外感が高い者は野党を支持する──点で、今のところは欧米と比べて余裕がある。しかし、グローバル化や技術革新を否定的にとらえる人ほど政治的疎外感を高める傾向にある点は、日本も欧米と同じである。しかも、日本は政府債務残高や少子高齢化など課題先進国にありながら、与野党共に長期的な国家戦略を描き切れていない点を鑑みれば、彼我の違いは発火点の有無に過ぎない。政治的疎外がもたらすポピュリズムは、決して対岸の火事ではない。
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