2022年に福井県立大学に新設された「先端増養殖科学科」は，若狭湾を実験フィールドとして，水産科学，ゲノム科学，環境科学，情報科学の幅広い視点から増養殖学研究を展開する。その中で無給餌養殖を主要テーマの一つに挙げている。無給餌養殖は自然の生産力を利用することから，海洋環境の情報を最大限に活用した持続可能な増養殖システムといえる。しかし，養殖生産を効果的に進めるためには，海洋環境のモニタリングを実施し，現状の把握や時空間変動を予測することが求められる。特に，幼生を自然採苗する場合は，物理環境だけでなく幼生の分布や季節的動態も不可欠な情報になる。無給餌養殖業は，それ自体が生業であり，流通・販売や観光などを通して地域振興の役目を担い，さらには自然環境を五感で感じながら社会活動を学ぶ海洋リテラシーの観点からも重要である。本シンポジウムでは，かき類とバフンウニをとりあげ，地域振興や教育の視点からの事例も紹介し，水産海洋学と水産増養殖学のコラボレーションがもたらす水産増養殖研究の新たな可能性を議論する。

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