電子メールシステムには設定された環境に応じた利用者の行動特性分布が存在することが推察される。本論文では、電子メールシステムにおける利用者特性を探り出す遺伝的アルゴリズムを用いた分析手法を提案する。この分析手法は、想定した電子メールシステムモデルにおける利用者個体の行動シミュレーション部分と、シミュレーション結果に基づいて遺伝的アルゴリズムにより利用者の行動特性を選択する部分とから成る。行動シミュレーションとその結果に基づいた利用者特性の選択を繰り返すことで、設定されたシステム環境に適合した利用者特性分布を得ることができる。また、この分析手法を用いたシミュレーションの実行例を通して、電子メール環境の状態に対応した利用者特性を抽出することができることと、電子メール環境の初期状態が固定的な場合には利用者数の変化によって利用者の行動特性が大きく異なることを示す。この結果、本手法は電子メール環境の成立要因として重要なシステムの効用と利用者のコストをより明確にすると共に、そのような環境を適切に運営するための示唆を与える一つの方法とも成り得ると考えられた。
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