脾嚢腫は稀な疾患であり多くは仮性嚢腫である.脾嚢腫と外傷との関連を求めると,外傷性脾実質内血腫から二次的に仮性脾嚢腫が形成されるとする報告は多いが,逆にまず真性脾嚢腫が存在し,これに外傷を誘因として嚢腫内出血を来した報告は極めて稀である.
本症例は真性脾嚢腫のうちFowlerの定義を満たすepidermoid cystであるが,外傷性嚢腫内血腫を来し,さらに後日嚢腫感染を伴って発症したと考えられる.本症例はまた,主病変の他に周囲に数個の微視的娘嚢腫を有しており, epidermoid cystの発生或いは成因に関しても興味ある知見を提示した.
Epidemoid cystを中心に脾嚢腫全般に亘って分類・成因・症状・診断・治療等に関する考察を加え,さらに1981年までのepidermoid cystの本邦報告例を集めて統計的観察を行った.なお,本邦報告例ではepidermoid cystの診断名に種々の表現が用いられており混乱がみられることから,呼称の統一が望まれる.よって私見を提示した.
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