最近, インポテンスの診断法や治療法は急速に進歩しているが, 心因性インポテンスに対する治療の効果判定法は現在なお不十分である. その理由は心因性インポテンスは, 治療効果判定に際し, 主観がはいり易いためである. 疾患の性質上, 治療効果を完全に客観的に判定することは不可能であるが, 著者らはできるだけ客観的にこれを評価すべく, 性機能の状態判定に必要な諸要素, すなわち性欲, 勃起, 射精, オルガスムを状態に応じて数量化し, score 0を正常, score 10を最も病的な状態とし, 0, 1, 3, 10の4段階表示を行い, これら score の総和で性機能を総合評価して, 治療前後でその score がどのように変動するかを調査して治療効果を判定した. 各 score 間を等間隔に設定せず対数的増加とした理由は, 各要素のうち1つでも score 10があると, 他の要素がすべて score 0であっても性機能としては極めて重症な状態と言えるからである. この判定を用いて検査したところ, 性機能に全く異常のない対照24例の total score の平均は1.67±0.26 (Mean±S.E) であったが, 治療前の心因性インポテンス24例の total score の平均は16.46±3.55と極めて高いことが判明した. 一方, 治療を4週間施行すると total score は9.37±1.77と著明に減少し, 両者間にはp<0.05で統計学的に有意差が認められ, 本判定法が心因性インポテンスの治療効果判定に応用できることが明らかとなった.
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