急性心筋梗塞の重篤な合併症である心破裂は,リスクとして初回梗塞,老年女性,広範囲前壁梗塞があり,発症48時間以内と1週間以内が多いと報告されている.一方,臨床では下壁梗塞に合併する心破裂例は少なく,急死に至る症例は稀である.我々は,63歳男性,高血圧未治療の急性下壁梗塞例において,発症7時間後に突然の下壁心破裂により死亡した症例を経験した.
今回,剖検例から突然死した下壁心破裂例の特徴を検討した.1991年3月から1998年12月までの当院法医学剖検例において,心破裂が突然死の原因とされたのは計19例で,前壁(AN群)8例,下壁(IN群)8例,側壁3例であった.性別はAN群:男性50%,IN群は全例男性であった.年齢に有意差はなかった.高血圧未治療例は3例全てIN群であった.左室重量はAN群336g,IN群442gとIN群で有意に大であった(p<0.01).
下壁心破裂例は前壁心破裂例と比較し,壮年男性で心肥大を伴う未治療の高血圧症例で多い.
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