本稿の目的は、2020年に釜石市内で開催した社会的記憶をテーマとしたアートプロジェクトを紹介し、オーラルヒストリーを利用したアートプロジェクトの可能性について考察することである。多くのオーラルヒストリーは歴史研究や歴史資料の作成・保存という目的のために行われるが、オーラヒストリーの可能性はもっと大きいと考えられる。オーラルヒストリーによるアートプロジェクトとは、人々が歴史に触れる歴史実践であり、多様な歴史意識を形成するものであった。このような歴史実践が、歴史資料に対する見方を変えることで歴史研究や歴史資料のアーカイブを支えていくと考えられる。
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