抗真菌活性をもつ漢方生薬としてオウバク末,キキョウ根末,センキュウ末,クレンピ末,オウゴン末を含む 17 種の漢方生薬配合薬(新中森獣医散
®,
中森製薬
株式会社,宮崎県)は元来動物の消化器疾患の治療を目的とする薬剤であったが,粉末を当量の水とまぜてペースト状にし,
Trichophyton verrucosum に感染しているウシの皮膚に連日 4 日間塗布したところ著効し,治療開始後 15 日以内に鱗屑の脱落を観察,1 ヶ月後には発毛し,治癒したという報告がある.そこで今回,人獣共通真菌症原因菌に対するこの配合薬の
in vitro での抗真菌作用を調べた.配合薬のエキスは濃い褐色のため液体培地による希釈法が応用できないため,平板培地における集落の直径を測定する方法で検討した.配合薬 0.1,0.3,1.0,3.0,10.0%(V/W)の割合で添加した 1/10 サブロー平板培地に皮膚糸状菌 6 菌種 9 株,日和見真菌症原因菌 7 菌種 9 株を 1 点平板中央に接種して,25℃ もしくは 35℃ で 2 ないし 6 週間培養し,集落の直径を薬剤無添加培地と比較した結果,
T. verrucosum,
T. mentagrophytes,
T. rubrum,
T. tonsurans,
Microsporum canis,
Histoplasma capsulatum,
Cryptococcus neoformans,
Malassezia pachydermatis には 0.3-1.0% 濃度で発育抑制もしくは発育阻止効果を認めた.一方,
Candida albicans,
Alternaria alternata,
Schizophillum commune,
T, mentagrophytes var.
erinacei および
M. gypseum では 3-10% 薬剤添加培地での発育抑制効果を認めたが,
Aspergillus fumigatus には効果を示さなかった.本配合薬は
T. verrucosum に対する発育抑制ならびに阻止効果は大であり,外用薬としてウシの皮膚糸状菌症に有効であることが
in vitro での活性からも証明できた.また多くの人獣共通真菌症原因菌種にも有効であった.
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