【目的】起立性調節障害(OD)は、思春期に好発する循環系を中心とした自律神経機能不全とされ、
不登校等の原因になることも多い。本稿は、薬物療法の効果が十分に得られなかったOD 患児に
鍼灸治療を行い、改善がみられた症例を報告する。
【症例】14 歳、男性、中学生[主訴]起床困難、入眠困難[現病歴]X-1 年1 月頃から食欲不振、
入眠障害、起床困難を生じ、登校が困難になった。近医小児科でOD の診断を受け、薬物治療を
行うも改善しないため、X 年1 月に鍼灸治療を開始した。[現症]起床困難、午前中の体調不良が
みられ、学校は遅刻・欠席が続いている。その他に、四肢の冷え、腹痛、食欲不振等がある。生
理機能検査では、OD テスト:陽性、体位変換負荷サーモグラム(立位、臥位):陽性、24 時間ホ
ルター心電図パワースペクトル解析:LF<HF(副交感神経優位)で異常が認められた。[服用薬物]
ミドドリン塩酸塩(2㎎ )・3 錠、スボレキサント(20㎎ )・1 錠等。[治療]自律神経機能の調整を目
的に、1 ~ 2 週間に1 回、計16 回の鍼灸治療を行った。1 ~ 5 診目は、頭頂部・四肢・腹部への
置鍼術(10 分、16 号40㎜、刺鍼深度5 ~ 15㎜)、手指・足趾爪甲角部への棒灸を行った。6 診目
以降は、頭頂部・背部への鍼通電療法(50Hz 間欠波、10 分、 20 号40㎜、刺鍼深度5 ~ 15㎜)を
追加した。効果判定のため、2 診目以降のOD 症状、登校状況、3 診目以降の起床時血圧の記録を
依頼した。
【結果】2 ~ 4 診目(21 日間)は、遅刻・欠席が93%、起床困難が67%、腹痛が67%、食欲不振
が24%の日に認められた。13 ~ 16 診目(30 日間)は、遅刻・欠席が0%、起床困難が0%、腹痛
が3%、食欲不振が0%の日に認められた。OD 症状および自律神経機能の改善が認められたため、
16 診で治療を終了した。
【考察】藤原ら(1997)の報告同様に、鍼灸治療は自律神経機能を調整し、OD を改善したと考える。
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