背景:高尿酸血症は,高血圧やCKDと密接に関連し心血管疾患合併症のリスク因子の一つとされる.一方,高尿酸血症が高血圧やCKDの新規発症のリスクであるか否かについては未だ議論の余地がある.
対象と方法:本研究は縦断的観察コホートである.2004年から2012年までの8年間継続して観察した健診患者14,360例の中から,調査開始時eGFR <60ml/min/1.73m
2,尿蛋白陽性例,糖尿病・高血圧・高尿酸血症などの治療例,妊娠例,データ不備例などを除外した7,536例をCKD発症追跡の解析対象とした.また,同様の除外規定を適用し,かつ血圧<140/90mmHgの正常血圧者6,401 例を高血圧発症の追跡対象とした.対象者の尿酸(UA)値を四分位に分類し(Q1~Q4群),CKDと高血圧の新規発症への影響を検討した.
結果:CKD発症とUA値;1 )8年間でCKD発症は,UA値が高い順にQ1~Q4群で順に4.3%,5.9%,6.0%,10.8%と高値になった(p < 0.01,χ二乗検定).2 )CKD発症の多変量解析では,年齢(相対危険度(HR)1.03,95% confidence interva(l CI)1.01-1.04 ),男性(HR 0.56,95%CI 0.42-0.75 ),UA 値(HR 1.13,95%CI 1.05-1.23 ),HbA1c(HR 0.81,95%CI 0.67-0.98 ),eGFR(HR 0.86,95%CI 0.85-0.87 ),HDL-コレステロール(HR 0.99, 95%CI 0.98-1.00 ),でありUA値は予知因子の一つであった(Cox比例ハザード解析).3 )CKD新規発症リスクのオッズ比(OR)は,Q4群(UA≧6.6mg/dL)がQ1群(UA < 4.9mg/dL)に比較し1.94 倍(95%CI 1.33-2.84 )と高リスクであった(ロジスティック解析).4 )Kaplan-Meier解析で高いUA 値とCKD発症に関連性が観察された(p < 0.01,Log-rank test).
高血圧発症とUA値;1 )8年間で高血圧発症は,Q1~Q4 群で順に24.9%,33.0%,38.8%,44.7% と高値になった(p < 0.01,χ二乗検定).2 )高血圧発症の多変量解析では,BM(I HR 1.08,95%CI 1.06-1.10 ),男性(HR 0.73,95%CI 0.62-0.86 ),SBP(HR 1.05 95%CI 1.04-1.05 ),DBP(HR 1.03,95%CI 1.03-1.04 ),HDL-コレステロール(HR 1.01,95%CI 1.01-1.05 )が予知因子であった(Cox 比例ハザード解析).3 )高血圧発症リスクのOR は,Q4群(UA≧6.5mg/dL)がQ1群(UA<4.8mg/dL)に比較して1.41倍(95%CI 1.16-1.71 )と高リスクであった(ロジスティック解析).4 )KaplanMeier 解析では高いUA値と高血圧発症に関連性が観察された(p < 0.01,Log-rank test).
結論:無症候性高尿酸血症は,高血圧とCKDの独立した初期発症リスク因子である可能性が示唆された.
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