本研究では,今後必要とされる介護労働者数の推計を行った.その結果,介護労働者の必要数は2030(令和12)年頃を境に減少に転じるが,生産年齢人口全体における介護労働者の割合は一貫して増加し続けることが示唆された.現在の介護分野における人材確保政策では,将来的に大幅な人材不足が生じることを前提に介護労働者の数の確保が強調されているが,前提とされている介護労働者の需給ギャップについては再考の余地がある.また,数の確保を前面に押し出すことには,介護労働の質や専門性の維持を困難にする危険性を孕んでいる.数の確保と質の維持,向上を同時に図るためには,流動的な人材(生活援助従事者研修の修了者などや技能実習制度に基づく外国人労働者)と普遍的な人材(介護福祉士等の有資格者や在留資格により日本で働いている外国人労働者)とを区別したうえで,それぞれに対して必要な施策が講じられなければならない.
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