水害の潜在的な危険性を内包しながらも,水害に対する意識や備えが希薄な人々が多い現状において,災害文化を育む災害教育の実践は,地域社会におけるレジリエンスを担保するうえで重要である。本稿は,過去の水害の記憶や経験を紡ぎ出し,災害文化を育む災害教育の実践の一例として「三世代交流型水害史調査」を取り上げ,地域社会・学校教育における水害ワークショップの実践とその後の展開について考察した。水害ワークショップは,有意義な実践であると評価されながらも,継続的な活動をしているところは現状では少ない。本稿ではそのいくつかの要因を指摘したうえで,水害ワークショップの実践をより継続的に展開するためには,教育の内実や,教育現場の実態を踏まえたサポート体制や,仕組みを編み出していくことが重要であると指摘した。とくにこれまで教育実践の内容を看過してきた社会学は,教育実践の内容を踏まえた分析と実践に向けた考察をすべきであると結論づけた。
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