要旨:手術医療の安全や感染に関わるさまざまなガイドラインがいくつか示されている。WHO*1が発行したWHO安全な手術のためのガイドライン2009(WHO, 2009)によれば,「WHO患者の安全性 命を救う安全な手術のための挑戦」のゴールは,すべての国と施設で適用できる核となる安全性の基準を定義することによって,世界中の外科療法の安全性を改善することである。手術医療の安全性は国際的にも重要視されているといえる。
現在,国内では医療の質と患者の安全性を国際的に審査する機関であるJCI*2やJMIP*3の認証を取得している施設が増加している。その背景には,医療の質向上のために患者安全を推進することや,医療の国際化を視野に入れて認証を取得している施設がある。国内ではこのような医療機関は,今後も増加すると推測される。一方,医療分野への人工知能(artificial intelligence:AI)の参入も加速化しており,将来的には手術医療の現場にもAIは参入してくると予測される。手術の進行や患者の状態に関する情報をリアルタイムに可視化し,執刀医や周術期チームの意思決定を支援し,治療・ケアの精度や安全性も向上するのではないかと考える。
超高齢社会となるわが国では,複数の疾患をもつリスクの高い手術患者を受け入れ,医療・看護を提供していかなければならない。とくに今後増加する認知症患者,高齢の障がい患者へのケアは専門性を要する。これらの患者をすみやかに在宅へ戻す,あるいは社会復帰させるには術後合併症の予防が必要不可欠となる。術後合併症を予防するためにも,手術室看護師が周術期での果たす役割は非常に大きくなる。周術期のチーム医療の一員として,手術室看護師は,周術期看護の実践能力を高めながら,国際基準を満たした手術医療の安全管理を視野に入れた看護を実践していくことが今後の重要な課題となる。
*1WHO:World Health Organization,世界保健機構
*2JCI:Joint Commission International,合同審査会(米国の医療機能評価機構)
*3JMIP:Japan Medical Services Accreditation for International Patients,外国人患者受け入れ医療機関認証制度
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