検診活動及び健康増進, 生活改善を含む健康教育活動を実施することによって, それが疾病予防及び医療費の軽減にどの程度役立つかを明らかにするために, 平成10~12年度の3年間にわたって研究を行った。その結果は以下のとおりである。
1.県の全市町村における医療費の分析
一つの県の全市町村について, 老人保健事業を含む健康教育活動と国保医療費, 老人医療費との相関関係について分析した。分析結果では, 保健婦数および老人保健事業による基本健康診査受診率について, 療養諸費と歯科を除く全ての診療費 (入院・入院外・計) に負の相関を認めた。
2.健康増進活動が充実している町村における医療費の分析
検診活動及び健康増進活動が充実している町村とそれが低くとどまっている町村を選び, 健康増進活動と一般医療費, 老人医療費との関係について調査分析した。その結果, 検診活動および健康教育活動が, とくに老人医療費を低下させており, 費用効果の点から見ても効果が大きいことが明らかとなった。
3.医療費に格差がみられる町村における要因の分析
医療費に格差がみられる二つの町村を比較してその要因について分析したが, 医療費が低い町村ほど, 老人入院医療費が低く, 健診受診率, 地元医療機関受診率, 在宅死亡率が高く, また健康知識・意識が高く, 健康づくり運動に熱心で, 心の健康状態もよいことが分かった。
4.国保レセプトによる検診継続受診者の医療費の分析
国保レセプトによる分析では, 検診を継続的に受診している者, あるいは健康づくり活動に積極的に参加している者は, そうでない者と比較して, 一人当たりの年間国保医療費が低いという結果が得られた。両者の差額は, 費用としての検診受診料をはるかに上回るものであり, 費用効果は十分あると考えられた。
5.検診継続受診者における有病率及び日常生活状況の分析
検診継続受診者とそうでない者について, 各疾病の有病率および生活習慣についてその改善効果を比較検討したが, とくに食生活, 運動・体操実施状況について, 検診連続受診者にその改善がみられた。
6.がん検診に関する費用効果の分析
各種がん検診における一発見数当たりの事業経費は, 腸がん検診が最も低く, 乳がん検診, 胃がん検診, 子宮がん検診の順に高くなり, 腸がん検診が最も費用効果が良好であった。また胃検診 (胃X線集団検診, 胃内視鏡検査) による胃がん発見者は, 非受診による胃がん発見者にくらべて, 胃がんによる死亡率が低く, 入院医療費が低かった。また逸失利益等を比較した結果, 受診者に利益が多いことが分かった。
7.介護保険導入による費用・効果の分析
介護保険制度導入によって, 被保険者の保険料と介護サービス利用の一部負担金が費用増加となるが, 一方では在宅介護サービスの強化, 特別養護老人ホームの開設, 短期入所の設置, デイサービスの開設など, 要介護者にとってサービスの拡大が図られ, 内容が充実した。
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